制御
ピッピ

戦争に行きたいと
妹は泣いた
誰かを殺めたくて
仕方ないと言った
兄ちゃんを殺していいから
お前は戦争に行くな
と宥めて
固い指切りをし合って
その日は一緒に寝た

明くる日
妹は出刃包丁で
僕の身体を何度も刺した
刺しても刺しても
僕は死ななかった
そのまま二人で泣き合った
痛いのと切ないのと寂しいのとで
泣き合った
裸になって
セックスをして
精液も出せないまま死んだ
ちがうところから
ちがうものがたくさん溢れてきた

けっきょく
妹は戦争に行った
帰る場所もないからと
そこでたくさんの人を殺し
たくさんの人に殺された
赤茶けた空を見上げて
ごめんなさい
ごめんなさいと呟きながら


自由詩 制御 Copyright ピッピ 2006-03-14 23:45:41
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