あぶくの中の十七歳
夕凪ここあ

泡になりたい
そう望んだのは十七歳 夏の日
ラムネの底から生まれる
消える気泡に見とれて
曖昧な私も溶けてしまいたい
いっそ

いつか

本の一部を鋏で切り取った
一片一片を繋ぎ合わせて
それを言葉と呼んでいた 
ぎこちない 偽物が汚い
言葉を失った
あれは 十七歳

隣の泣き声に何故と聞こうにも
私の口から発せられるそれは
ひどくぎこちなくただの記号
だから止めておきました

ちょきちょきちょき

と相変わらずに鋏を滑らせて
存在を確かめようと
繊細 な年十七歳
切り取っていたのは想いを寄せる誰か
あれは十七歳の
今日のような夏の日のこと

あんまり暑いので
勘違いしたってしょうがない あなた
私は泡になりたい 十七歳
はとっくに過ぎたけれど
確かめる必要はもうない、と
知ったのは十七歳の淡い恋

夏の日 ラムネの瓶の底には
私が生まれては消えた
曖昧な私を繋ぎ止めておいて
私を
全て飲み干したら
あなたの中に今度は生まれる気がする

隣であなたを見ていると
思い出した 
泡になりたい
そう望んだ十七歳 夏の日のこと



自由詩 あぶくの中の十七歳 Copyright 夕凪ここあ 2006-03-12 22:02:11
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