No.21部屋ルーム
カンチェルスキス
駐車場みたいなスペースにコンテナをいくつか並べて
カラオケ屋にしてみた、みたいなカラオケボックスだ。
No.21の部屋
おれは
ビールのジョッキを片手に微笑んでるポスターの女を
見つめていた
途中
グレイのジャケットに小豆色のシャツの白髪頭のおっさんが
入ってきた。
「いい女だねえ、あんたの彼女?」
「ママだよ」
「若いね」
「こう見えても更年期障害に悩まされてるんだ」
「えらく薄着なんだね」
「夏の女だからね」
「じゃあ」
「ああ」
おっさんはよろよろと出て行った。
壁の角に丸文字で落書きがあった。
Ayumi
Nao
Yumiko
たぶん仲良し女子高生三人組なんだろう。
三人ともおれをフッた女の名前なのはどういうわけか。
テーブルには二時間前に注文して
ほどよく冷えたホットコーヒーがあった。
爆弾寒気団がやってきた一日だ。
一気に飲み干した。
延長はしなかった。
二時間過ごしたうち
おれが歌ったのは
斉藤由貴の『夢の中へ』一曲だけだ。