東京音楽
nm6

ぼくららららの東京音楽はスピーカーから
店内のボーズが屏風に上手に絵を描いて
店頭のラジカセの上にカラスでアーアーと鳴いて
例えばその街には かわいい人も悲しい猫もいます

ひるがえって部屋
ぼくららららの家の壁も床もペラパレの一枚板なので
隣人のコンポの低音だけが夜をつらぬき
ギシやミシやと 頼りなげな音を立てますが
それでも雨が降れば カタンタカ鳴るのは悪くありません

ストトトンと鳴らす包丁の延長線上には
テレビが東京タワーから乗ってきて笑っています
まあ 画面の中だけと 許してあげましょう
どこにあろうが テレビはテレビですから


夏には蚊や蝿がテルミンのように
冬にはビル風がくちぶえのように


「ありがとうございましたー」



工事現場のブルドーザにループする信号機が重なり
エスカレータが踏むライムをハイヒールがタップして
リズムマシンな群集をアナウンスがやさしく包む
ほら みみを



「いらっしゃいませー」


ぼくららららの東京音楽を
奏でています
みみを みみをと
きけ きけと


ほら テレビが
あの東京タワーから乗ってきて笑っています
赤く 光っていますね


自由詩 東京音楽 Copyright nm6 2004-02-03 23:55:58
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