シフトダウン
カンチェルスキス




  
  急傾斜


 信号を待ってる間に
 何度も死んだ
 閉じたままの傘を
 飽きて
 植込みに投げ捨てた
 車が走っている
 牛丼屋のカウンターで
 白のロングマフラーの女が
 牛丼をかき込む。



  ポップセンス


 駅前銀行の前の
 違法駐輪の列から
 三毛猫が出てきて
 隣の駐車場のステップワゴンの下に
 潜り
 エンジンの匂いを嗅いだ
 キャッシュサービスコーナーから
 水色の作業着の男が出てきて
 4メートル手前から
 リモコンキーで
 ステップワゴンのロックを
 解除した。



  閉じた海


 ショッピングセンターに
 着くまでに
 通りから人は姿を消した
 郵便局の郵便ポストは口を
 閉じることができなかった。



  ミスティ


 幸運という名のスロットマシン屋の警備員が
 土木作業員の労働後のような重さで
 ガードレールの外側に沿って歩き
 高架下の公衆便所に入っていった。



  助けて


 暗闇の公園
 電波塔の赤いランプが
 木々の間ににじむ
 グランドの
 倒れたサッカーゴール。
 
 

  連続

 
 ガラス工場の夜勤勤務者が
 工場に向かって
 路地裏の右側を歩き
 咳をする
 シューズの踵に蛍光塗料
 自転車のライトに反射した。


 
  誠実


 信号を待ってる間に
 何度も生き返った
 縁石に立っていた
 白線に伸びた信号機の影が
 口を開いていた
 入りにいった
 ダンプカーは避けてくれなかった。



  誠実な


 信号機の影は
 このためにある。
  
 
 
  態度


 植込みに変な形で
 突き刺さったままの
 傘。






 


自由詩 シフトダウン Copyright カンチェルスキス 2004-02-03 14:50:07
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