霊能者が書き留めた幽霊の聴こえない歌
岡部淳太郎
ゆうらりと
ゆれてしまえばかげひとつ
かげとかげとがかさなって
もっとおおきなかげひとつ
もっとおおきく
もっとかぼそく
うたってしまえば 月 むざん
うたってしまえば 夜 むざん
ゆうゆうと
うらみます
ゆうゆうと
うら みます
ゆうらりと
ゆれてしまえばいきひとつ
つめたいいきをふきかけて
もっとつめたいいきひとつ
もっとつめたく
もっとかよわく
くちふるわせて 星 むざん
くちふるわせて 夜 むざん
ゆうゆうと
うらみます
ゆうゆうと
うら みます
うたはらんるのすきまかららちされて
ゆるやかなしゃめんをすべりおり
うたはらんしのしりょくでちらばって
ゆるやかなしゃめんにすべりこみ
ゆうらりと
ゆれてしまえばかげひとつ
いきとかげとをからませて
もっとふくらむかげひとつ
もっとふくらみ
もっとかすかに
うたってしまえば 闇 むざん
うたってしまえば 人 むざん
ゆうゆうと
うらみます
ゆうゆうと
うら みます
よにんのむすめがたびにでた
だれもがみんな しにました
(まるで 私の ようにです)
(二〇〇六年二月)
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