孵り道
a.u.i.




言葉は研ぎ澄まされてやがて空になる、という迷信は







 

いまだ空を知らず












飛べずにいる











逃げた、って言われるのがやで













黄色のマウンテンバイクを飛ばして









踏み切りの赤い祈りの海を渡って









あとは青い夜か、もしくは青色の好きだったきみがいれば











最高じゃないか、



















そう思った














しびれる寒さで涙は沁みこんで、手が透き通ってくように思えた


































この透明な手で詩をかこう、今夜














クラクションが最後の警報みたいに鳴り響いて









願い星に願うと、願いは死んでしまうから















いつしか、そっと夜に沈めて殺すことにした











猫が、伸びをして










雨がさっと傘を色づけた

























私は少し、泣きたかった














大切でないものを指折り数えてみたら









両手いっぱいに溢れかえってしまったから

















あなたの手もほしい、










そんな夜だった









”あなたが元気で生きてくれれば









それだけで、
いいのよ”


と、
母の言葉は





きっとなによりもの願いであった、

















そっと沈めるのはもうやめて













殺すためにはまず生かさなければ、と思った


自由詩 孵り道 Copyright a.u.i. 2006-03-01 00:36:13
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