帰りたい家
ミゼット

懐疑的な夜の上を
ひとり、女は行った。

光るものは
上にも下にも見えて
波が寄せるだけ、心が騒ぐ。

足元で魚が幾匹かはねた。
踵が折れて、靴は捨てた。

行きたい場所なぞどこにもないから
いつまでたっても着きやしない。

赤い手袋をはめて
尖塔の先に角砂糖を積んで積んで
誰かの役に立たない祈りを隠す。

囁きだけで、崩れて
光りながら落ちていく。

帰りたいのは
山茶花の咲く、私のあの家。


自由詩 帰りたい家 Copyright ミゼット 2006-02-24 23:58:45
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