ノート(まぶしい日 Ⅱ)
木立 悟
窓のそばでかさをひらくと
ともだちの声が聞こえないので
仕方なくかさを持ったまま
くちびるの動きを見つめている
青かったかさ
今はむらさき
何かがすさすさ動いている
どこか見えないものの影が
いくつも窓を通りすぎる
光と音のはざまの遠さに
まだらな午後のはばたきがある
外の光を脱いでは履いて
履いては脱いで 履いては脱いで
ひらいたままのかさの下
ふいに鳴いた姫鏡台を
猫のように抱きしめて
むらさきの声を反芻する
くちびるの光を反芻する
雲の下の風を飛び
雲の上の陽に染まる
まだらな午後の翼の子
新しい海と新しい空のはざまに
静かに影を撒いてゆく
小さな影を撒いてゆく
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