こんにゃく時代
角田寿星


授業のみじかい休み時間に
俺たちは 10人くらいでわいわいと
こんにゃくでの正しいオナニーの仕方について真剣に討議しあった

机にフリーハンドで長方形を三、四個 描く
さて これでどうやってナニを気持ちよくさせるか
俺たちは17歳童貞妄想力をフルに活用させる

やっぱりこれだろう サカシタが
四角こんにゃくの中央にちいさな円を描く
シンプルに こんな感じじゃねーの ユノグチが
縦にスッと割線をいれて おお とみんなで納得する
するとソノダが ぎざぎざの波線を描きだして
達人は こうすんだってよ
ふうん ひと呼吸おいて
こんにゃくオナニーの達人??
それからしばらくソノダはこんにゃくマスターと呼ばれるようになった

次に俺たちはカップラーメンでヤる方法について熱い議論を戦わせた
こんにゃくマスターのソノダもそれは知らなかった
俺たちの考えたやり方では
ナニがヤケドしたり ビバノンノ状態になったり
どうやっても気持ちいいオナニーを完成できなかった
ガセ…か?
お湯を捨てて底にナニを通す穴を開けるというコペルニクス的展開に
俺たちは辿り着けなかった

校舎の四角い窓から眺める景色はそれなりにいいけどもう見飽きてしまった
俺たちがフリーハンドで描く四角はどこかイビツでなぜかカッコ悪かった

そのラーメンは…食うのか?
オカモトが天然ボケぶりを発揮して
んなわきゃねーだろう とみんなでウケる
そうだ つまんないことで俺たちはいつも大笑いしてた
ニノミヤが はにかみながら小声で
シビれた手ですると 自分の手じゃないみたいで いい
と言う
俺たちは放課後 帰りがけのスーパーで
おひとり様 一枚づつ こんにゃくを買う様子を想像して
こりゃあ エロ本買うより勇気いるなあ と
始業のベルを聞きながら
議論を終えた

次の休み時間 フルカワが開口一番
俺 授業中 ずっとヤラしいこと考えてた ぼそっとつぶやく
実は 俺も ヤラしいこと考えてた ミヤザキが
実は 俺も オニツカが
俺も カマダが
俺も ヤナギハラが
俺も マツモトが


自由詩 こんにゃく時代 Copyright 角田寿星 2006-02-20 22:27:54
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