カテゴリーと恋愛詩とワイシャツとわたし
黒川排除 (oldsoup)

岡部淳太郎「恋愛詩の可能性」
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=65877
りす「岡部淳太郎さんの『恋愛詩の可能性』を読んで」
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=65946

 たとえばおれが宇宙詩と名付ければそれは宇宙詩だし、カピバラ詩と名付ければそれはカピバラ詩なんであってそれを使うさいに、それは宇宙詩じゃねえよカピバラ詩じゃねえよといわれても、どうゆうことよと言いたくなるわけだ。ただそうやって宇宙詩などと名付けるのはひとの詩であるべきで、じぶんの詩であってはならない。うたで考えると、じぶんではあれこれのジャンルでやってるつもりなのに、CD屋に行くと「J-POP」の棚にドーンと置かれているわけであるが、だからといって、いやこれはJ-POPなんかじゃなくてですねえと言う歌手がいてもまあきもちがわるいっすね。そこでじぶんのはなしをすると、おれは恋愛詩(特に岡部氏のいう具合の甘ったるい奴)なんて見たくも書きたくもないわけだが、おれが書いたものが「恋愛詩だ」と言われれば甘んじて受けるほかない。要するにこれはカテゴリーの問題らしかったのでおれはこの文章を書くことにした。

 岡部氏の書いている引用の方は比較的長たらしいのであんまり読まないけれど、文章の最後の方で彼が書いている通りに彼には恋愛詩の可能性について別に幅を狭めようだとか限定をしようだとかいう意図はないはずなんだが、これをりす氏は自身の文章の冒頭でそんなカテゴリーはないよと言ってるわけでこのすれ違いようは非常に興味深いんだ。岡部氏の最後の文章は確かに言い切り型の文章にしては言い訳くさいがどちらかといえばコレハ決意表明デシタヨみたいなもんなんだろう。いうなれば個人的なことである。しかるにりす氏のゆってることはカテゴライズの問題としての恋愛詩の話であってこれはおおやけというか客観というかなんていうんだっけ、まあ個人的なことではないよネ。ここで最初の話を蒸し返すに、宇宙詩というカテゴリーもカピバラ詩というカテゴリーも存在しない、確かにそれはそうだ。カテゴリー自身どちらかというとむやみに存在しててもらっても困るもので、やれブラザーアクションRPGだ脳活性化ソフトだといわれてもうっとうしいだけだ。それは会社側がいうことじゃなくておれたちが決めることだろと言いたくなるわけで、だんだんカテゴリーというものが個人的に用意されるしきりや箱のようなものだということがわかってくる。

 すなわち彼らの意見が食い違っているのはカテゴリーの扱い方に問題があるわけで、そういう方向から見るとおれはりす詩、ああああ氏と詩がこんがらがるのでもう「さん」でいいや、りすさんがああやって書いていることは妙に見えるわけである。カテゴリーというのはあくまで読む方が、例えばカテゴリーとしては口にしないでも頭の中では例えばABCぐらいのボックスは作っておいてこの詩はAだこの詩はBだなんつってる、そういうときに使う便利グッズがカテゴリーなんであって、××カテゴリーなんて存在しないと言われても栓抜きは存在しているから手で栓を抜くわけにもいかんだろうと思うわけで。だからといって栓抜きを首からぶら下げて歩くわけにもいくまい。

 と、ここまでお互いの文章を読み進めるにあたって、りすさんがとても興味深いことを書いているのに気付く。テーマという言葉だ。なるほどテーマだ、そうだテーマだ。テーマというものはまさしくカテゴリーと逆で、書くにんげんが最初から頭に決めてかかっているものであるなあと。岡部さんが提示したテーマの問題のなかの出来事を、りすさんはどうやらカテゴリーの問題と混同しているようなのであるというかズバッとおもいっきりテーマテーマと書いてはいるんだけれども実質切り口はカテゴリーであってテーマとカテゴリーはまったく別個のものであると。じぶんの輪郭というものがあるとしてその輪郭の内側がテーマで外側がカテゴリーなわけだ。例えば恋愛をテーマとした詩を書いてもそれが恋愛というカテゴリーにしっぽり収まるわけではなくて、作者の意図に反してクズ詩だとかヨムニアタイシナイ詩とかアクションバトル詩だとか、まあそんなことがあるってことさ。世の中はあんまりうまくできてないよ。振動式マッサージャーとして売り出したのに細くて長いから夜の営みなんかに使われちゃったりするわけだよ。まあ別に太くてもかまいませんけどね。何の話だ。ともあれテーマとカテゴリーというふたつの相容れないものによってなんだか変なすれ違いが起こっているなと感じそして分かったのでおれは文章をかくのをやめようかな、えーっと最後に例示。

 ふつう→「恋愛をテーマとした詩を書く」

 きもちわるい→「恋愛のカテゴリーの詩を書く」

 
 今読み返したら岡部さんの文章のなかにもテーマテーマってたくさん書いてあったよハッハッハ

 まああとこれはコメント欄を見てて思ったことなんだけど、作品として出しているのに「読みたくなければ読まなければいい」なんていうのは正しいんでしょうけど、贅沢じゃないかしら? おれはどっちかっていうと、読みたくないひとにもできれば読んでほしい派。だってそうでもしないと読まれないもん。


散文(批評随筆小説等) カテゴリーと恋愛詩とワイシャツとわたし Copyright 黒川排除 (oldsoup) 2006-02-20 07:38:10
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