記憶だけの想い
くま
時間が経てば鮮明に忘れていく。忘れたくない綿声は、どんな温度だったろう。睫毛に乗った真雪が涙に変わるまで、どのくらいの優しさが必要なのだろう。そこにある、音のずれ。柔らかな音が、赤い針に変わって胸を突き刺す。しくしくとなく胸がうるさいから、僕は怒れる子犬になるんだ。きゃんきゃん泣いて、泣き止んだ後に後悔して、また泣くんだ。
記憶の笑顔がくすんだ。僕がそれを壊すんだ。ただ、それだけなんだ。
散文(批評随筆小説等)
記憶だけの想い
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くま
2006-02-19 01:15:31