ビー玉遊び
紫音

  感情の表層を抉るように
例えば それは
 ビルの谷間を駆け抜ける

 横溢する鬱屈のアニマに
  放置された
 束の間の雨季

羽化しかけの蛹さえ
約束されたその日があり

孵化しかけた卵さえ
光明の中に抱かれた明日があり


  アスファルトを熔かす熱線

 ガラス窓を砕く寒波



  時として失われてゆくとして

 イミテーションの器に彩られるのは

偽りのイルミネーション


  瞬きの間に

 そそくさと通りゆく足音のように

それは霞んでゆく


 君は誰 誰は君


向かう先の
暗がりに沈む足元に

  ビー玉を転がしてみても
   ひとり



流れ逝く往来の中で
いくつの交差が
いくつの交錯が
 人の形をすり潰す




    その都市の切れたところ


      それは意味の消えるところ



  逝きつくところ


  息つくところ




今日が果てしなく遠い


自由詩 ビー玉遊び Copyright 紫音 2006-02-17 23:58:11
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