「しゅうりずみ」
服部 剛

( あさ )

おきてかおをあらってかがみをみて

「きょうも1にちがんばろう
 できのいいにんげんにならねば」

てにしたドライバーで
からだじゅうのねじをしめた 

こわばったかおのまま
しょくばでみんなとすごすぼくは
なぜかちぢこまるばかり 

あげくのはてに 
しゃちょうがはいごにいるときに
ぞうかのはなに
じょうろでみずをやるしまつ

( ひる )

やすみじかんのこういしつでひとり
くたばったぼくはまるまってねていた

ドアがひらき
つなぎをきたしゅうりやのたけさんが
ドライバーをてにはいってきて
からだじゅうのねじをすこしゆるめて
かたをぽんとたたいて
でていった

( ごご )

ふしぎとちからがぬけた
むねのおくになにかつっかえていたものが
ぽろりとぬけたらしい

ひとびとのなかにはいると
ゆかうえいちめんのくものうえ
ぼくはかかとをうかせて
じそく100きろであるいた

しゅういのひとびとは
すろーもーしょんのえみで
うれしそうにぼくをみていた 

( よる )

しごとをおえたぼくは
こういしつでぬいださぎょうぎのせなかから
はらりとおちるものがあり
あしもとをみると
「しゅうりずみ」のはりがみ1まい

いりぐちのともしびのした
ドアをひらいて
しふくにきがえたぼくがでてくると
ニヤけてたっている
しゅうりやのたけさん

「ちょうしはどうだい?」 

てにしていたのは
やみにキラリとひかる
ぼくのあたまにはいってた
1ばんふといネジだった 





自由詩 「しゅうりずみ」 Copyright 服部 剛 2006-02-13 20:17:10
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