スカイライン
霜天

その川と海とがぶつかる場所で、誰かが手を振っている
回転を続ける灯り、列になって逃げていく光
そのどちらにも負けないように小さく、手を振っている
海はどこでも引いていき、魚が飛び跳ねる
月へ向かって
笑い残せるように
砂の上に残す乾いた
笑い、残せるように


点滅するスクリーンには誰の名前もない
エンドロールのどこにも君はいない
当てもなくただ誰かに会いたくて
開きかけた傘をもう一度、元に戻す
濡れながら雨の、暗い海を見つめて
昔はあそこに灯台があったんだよ、と
誰かの声でつぶやく



スカイライン、君によせて
一つ一つスピードを重ねていけば
君は気付かずに
空に浮く
一過性の感傷は滞ることもなく
二人を振り分けていく
そんな都合のいい季節が

何か、囁いている



そして、手を振っている
気付く、ということに
気付かない振りをして
ただ独り、手を振っている
浅瀬と、深く沈んでいく世界の境界
そこで落ちないようにバランスをとりながら
忘れゆくものたちへ、手を、振っている

僕らはその隣を、スピードを落として通り過ぎる
透き通った人たちが海へ向かう、その横を通り過ぎる
君は気付かずに深く、沈み込むと
ゆっくりと目を開けて、出会う


空の稜線
おはよう
ここも今日だ


自由詩 スカイライン Copyright 霜天 2006-02-09 00:22:05
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