双子の樹 。
クローバー

双子の樹がありました
近所の通り道に。

双子の内
通りに面した弟の樹は傷が残っていました
幹から一度、切り倒されそうになって。


姉さん、どうして、ボクだけ
 切り倒されそうになったんだろう?

姉さんとボクどこが違うの?

姉さんばかりずるいよ

姉さんは、卑怯だよ

弟は、姉が切り倒されないでいることが
納得いかなかった。
どうしてボクばっかり、って思ってた。

姉は、弟がかわいそうだった
そんなこと言わないで、私は、あなたを愛してる
切り倒されなくて、嬉しい、と何度も言った。

弟は、開いた傷口から
ひどい言葉を、姉に言い続けました
そうしなければ、苦しかったのです
必要ない、邪魔なだけの存在だと
傷口が彼を責め続けていたから

いつか、姉さんも、ボクみたいに
傷つけてやるんだ。
だって、ボクばっかりなんて、ずるいじゃないか。
傷口はいつも、グジュグジュ言って
姉を、悲しませました。


悲しいが、姉を蝕んでいきました
双子の姉は、病気になってしまいました
そしてとうとう
私は、あなたを愛しているわ、と言って
枯れてしまったのです

弟は、いい気味だ、と言いました


しかし、姉を失った、その日から
傷口が腐りはじめ
終には
姉がいない寂しさに凍えて
枯れてしまったのです。。。




-------------------------------------------------------
僕は、斧で、双子の樹を根元から切り倒して、マキにしました。
風呂を焚くと、火の粉がふたつ絡まるように空へ
螺旋を描いて昇っていきました。



自由詩 双子の樹 。 Copyright クローバー 2004-01-30 21:24:46
notebook Home 戻る  過去 未来