多目的マスターベイション
カンチェルスキス






  おれは驚いたが
  どうすることもできなかった。
  画面が切り替わり
  イラン大地震のニュース。
  黒いほうっかむりの老婆が
  瓦礫の上で
  泣きながら
  息子の名前を叫んでいた。
  おれはお気に入りの女子アナで
  射精しようとして
  自分のモノをしごいていた。
  女子アナが着てるのは
  胸の形がはっきりわかるニット地だった。
  一週間に何度もないことだ。
  目をつぶり想像した。
  目を開けると
  老婆が叫んでいたのだ。
  絶頂を迎えていた。
  おれも老婆も。
  目を逸らしちゃいけない
  これが現実だと自分に言い聞かせた。
  そのままイッた。





  その後でおれは
  ビールを飲んでいる
  この世におれ以外の人間がいることなんて
  忘れて。







自由詩 多目的マスターベイション Copyright カンチェルスキス 2004-01-30 16:10:54
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