虚羽(うつわ)の天使 Ⅳ
木立 悟


ゆくえなく めぐり うつろうままに
羽は雲のまだらを駆ける
けだものの息をたずさえて
午後のすべてを火照らせながら
夢から現へ燃えあがる
虚ろな羽は燃えあがる



雨を残して夜は明ける
原はどこまでもかがやいている
雲と雲の間の鈍色
煙る光の両側で
空と地のように向かいあうもの
幾度 瞳に見つめられても
けして瞳に染まらないもの
すべて壊れたものに乗って
羽は湿地の金色をゆく
声だけしかいない
声だけしかいない
原のなかをゆく



季節が途切れ はじまるはざまを
やわらかくひらく 拙い灰の手
雲の道 地の道が交わる先
音はうつろうままに過ぎゆく
すべて壊れたものに乗って
遠く空を掻く櫂の手の水紋
腕ひらく 羽ひらく その先にまで
うつろうもののかたちはひびきわたる





自由詩 虚羽(うつわ)の天使 Ⅳ Copyright 木立 悟 2004-01-30 06:38:51
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