雪と光
木立 悟
雪にわずかに沈む枯れ穂が
足跡のように原へとつづく
雨あがりの緑が壁をのぼり
水たまりの灰に軌跡を零す
空は青く
地の霧は蒼く
かかげられた腕の輪は
ふたつの色に染められてゆく
たくさんのこまやかな泡の波が
青をわたり伝わってゆく
次の次の空にまで
地から曇からあふれつづける
雪のふりをした光の砂が
とまどう雪の手をとって
原をまるく駆けてゆく
たなびくすがたに駆けてゆく
溝を流れる蒼い水が
研ぎすまされた鉤の技で
真昼をひとつずつ抜きだして
異なるかたちに積み上げる
罠のように時間は遅く
雪の笑みはゆうるりと
光の砂に照らされて
午後はまぶしく高くすぎてゆく