雪と光
木立 悟





雪にわずかに沈む枯れ穂が
足跡のように原へとつづく
雨あがりの緑が壁をのぼり
水たまりの灰に軌跡を零す


空は青く
地の霧は蒼く
かかげられた腕の輪は
ふたつの色に染められてゆく


たくさんのこまやかな泡の波が
青をわたり伝わってゆく
次の次の空にまで
地から曇からあふれつづける


雪のふりをした光の砂が
とまどう雪の手をとって
原をまるく駆けてゆく
たなびくすがたに駆けてゆく


溝を流れる蒼い水が
研ぎすまされた鉤の技で
真昼をひとつずつ抜きだして
異なるかたちに積み上げる


罠のように時間は遅く
雪の笑みはゆうるりと
光の砂に照らされて
午後はまぶしく高くすぎてゆく









自由詩 雪と光 Copyright 木立 悟 2006-02-04 20:51:04
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