化けの皮をはぐ
入谷理

きつねの面の皮をはぐと
彼女の顔はしみったれて
ぼんようになった

赤ら顔の飲兵衛で
ざるのように酒を浴びた
あるいはサルだったのかもしれぬ

きつねの面にだまされて
ひとめでほれた
面食いのおれは
あほうであった

しっぽをだしたということは
あほなきつねであったのか

首に巻いていたのが
しっぽであったか

おれは彼女のしっぽを
掴んだつもりでいたのだ

だまされたというには
せつない話であった

ただ、
きつねの面の皮のしたには
弱さがあった
ということを知らずにいたのだ

したたかに
掴まされただけかもしれぬ

いまだにおれは
あほうである

泣き虫で飲兵衛の
きつねを

やさしく
撫でてやる

ふさふさした毛の
しっぽである


自由詩 化けの皮をはぐ Copyright 入谷理 2006-02-04 12:11:31
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