さよならの雪だるま
ベンジャミン

(ゆーきや、こんこん…)

めずらしく降った雪のおかげで
妹は
はじめての雪だるまをつくりました

あんまりまるくないところが
妹の性格と似ていて
思わず笑ってしまったことを
今でも覚えています

(あーられや、こんこん…)

棒にかぶせた手袋が
自慢げに高々と手をあげていたのは
ほんの数日だけでした

(ふっても、ふっても、まだふりやまぬ…)

良くなる天気と裏腹に
妹の咳はひどくなり
融けてゆく雪だるまのように
妹も弱々しくなってゆきました

(ゆーきや、こんこん…)

窓にしがみついて
外をじっと見つめる
妹の視線の先には
今にも消えてしまいそうな
雪だるま

白いカーテンをひきながら
僕が横になれよと言おうとしたとき
突然
妹は血相を変えて
僕の腕にからまりながら

「にいちゃん!いまね
雪だるまが、さよならて言うたんよ」と

(あーられや、こんこん…)

見ると
手袋をかぶった棒が倒れていて

「にいちゃん、あんね
あたし雪だるまに
また会おうねって言うたん」

(ふっても、ふっても、まだふりやまぬ…)

僕は涙をこらえながら
うなずくことしかできなくて

冷えた背中をくるむように
妹を強く抱きしめていました






自由詩 さよならの雪だるま Copyright ベンジャミン 2006-01-31 13:02:15
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