そらのさかな
霜天

空の底
空気圧
破裂してしまいそうな
煙のように混ざり合ってしまいそうな


ねえ
そこで泳いで
きみの背中は
一時間だけのため息が根を張るように
そこでひっそりと、目を閉じていくだけですか

ここの空はどうだろう
   息苦しさのくちびるで



そこで少女は
噛み付くような白い爪で
柔らかい誰かの手の裏側を懐かしんで
世界から落ちないように舌を絡ませる
ねえ
僕らの世界にも
思い通りになる夕暮れなんてなくてね
僕らの街も、とかい、そう呼んだ空にも
眠るだけの体温は残っているみたいでね

白い管が透き通って
僕らにもどこか循環していて
目を閉じて、背びれをばたつかせて
泳いでいくさかな、は

ここの空はどうだろう
   少しだけ笑ってしまって



それでも



十分の一の足跡がいつまでも消えなくて
帰っていく空にも、底を指でなぞるように
約束を、やくそくと呼んで
泳いでいくきみの背中にも

澄んだ呼吸をいつだって欲しがる


どうぞ潜り抜けていけますように


自由詩 そらのさかな Copyright 霜天 2006-01-31 00:36:46
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