楓(かえで)
こしごえ

空から音も無く降る雪の
つもる速度のいじらしい熱

ちょっとまえの流星は
乾燥した鋭い声で失礼のないように
(絶望はできない。
と軌跡をのこし消えていった
このとき雪はしゃららららん
といったふうに流れていた

雪明りにふちどられた
老人の青白い輪郭が
パチ パチ
まばたきをしてから
冬眠している翼手で手招きをしている
私は無音むおんに根をはりめぐらせて
翼果に声を託して今
。赤赤と風へ還る)

これ以上これ以下でもない
からだは無言するしかなくて
世界の前で掌をさらす
顔だけは変に歪んで無表情に笑っている
かなしい
とかなくってただお前は
無表情に笑い
山羊が宙を見つめている




自由詩 楓(かえで) Copyright こしごえ 2006-01-28 11:50:59
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