ドア
待針夢子



(世界は、毎日終わっているのになんで誰も彼も平気なの!)



さんざぐずった女の子は、清潔なシーツですぅすぅ眠る
おもたいミルクの呼吸が、部屋中に立ちこめる


22時、最終のからくり時計の音が、
テレビの光に反射するのが、
きれいだなと思う


こうなることは知っていたから
わたしはドアの鍵をあけていた


ねぇ、
わたしだって、こわい
何度見ても夜はこわい
何度見ても朝はこわい
でも、
あなたがここにきてくれた

ねぇ、
ゆっくりと胸を、
あげさげしていこうよ
そうすればいつか、
名前を付けたものもいつか
忘れてしまう
 

今夜のあかるい空も、
路地裏の楽器売りも、
バターで反射する光も、
立つ足をなくした望郷も、
ライオンのぬいぐるみも、
世界が毎日終わるということも


真摯に思索すること、
光線を目で追うこと、
だらしなく涎を垂らすこと
何もかも、
何もかも同なんだから


ねぇ、
わたしだって、こわい
何度見ても夜はこわい
何度見ても朝はこわい
でも、
あなたはここにきてくれた
それでわたしは生きていける
それが錯覚だとしても

水平線は少しいびつだけど
時計は逆まわりしないけど
ちいさくても
わたしもあなたのひかりでありますように



ベッドの上に手を伸ばして、
女の子の黒髪を撫でつける

今日が終わる

この閉じたベッドルームが
夢からさめたあなたの墓場でありませんように


ねぇ
明日もわたしを怖がらないで



自由詩 ドア Copyright 待針夢子 2006-01-28 05:49:26
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