東京Days
霜天

そして
それがほしい、と言う
響かない足音が、ついて来るのを待たずに
それがほしいの、と
繰り返して、言う

これだけ
狭い雨で何が望めるというのだろう
手を伸ばせばイチからゼロにぶつかった
不自由な僕の妄想
小走りに探しに行けば
影の先端から途切れていく
表面のないビルの中で中身のない人と出会う
それでも、挨拶は繰り返した


 改札口
 から、広がっていっても
 いつもどおりに震えてしまうので
 手を繋いでいたかった
 繋いで、いたかった
 嘘をひとつ切り抜けては
 削られるようにして、振り切れない
 薄い煙のかかる世界で
 あの天辺は、いつも見えない

 日暮れの裏路地で
 どこの言葉か分からない声を、聞いた
 細かく、分断された地図の上です
 僕らの、測るような囁き
 どこに紛れていっても、どうにかなりそうで
 つまずかない、目を閉じて
 その手をつかんで歩いていたのは
 どうにかなりそうな地図の上、だからで


蓋をした、部屋
どこにもいけない想像で
もう一度目を閉じる
ため息の優しさ
今はどうにも
滑り込んでいきたくて

それがほしい、と言う
それがほしいの、と
望まなくても触れている人
考えている可能性の
混ざり合った地図の上で


自由詩 東京Days Copyright 霜天 2006-01-25 17:08:16
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