銀河鉄道の夜
クリ


 ==≠=
ハリウッド製の青い夜のもと
いつとも知れず、列車は消えるかい?

三日まえに彼女にした不思議な話を
昨日親友の口から聞かされる
 (こいつだったのか)
彼女が二日続けて同じ服装だった理由を
へっぽこ探偵の僕は推理してしまう

でも事件は解決しない
迷宮入りか、主人公が死ぬのか…
それとも探偵が自殺するのか?
犯人はマジシャンか?

彼女の肉体と記憶を乗せたまま
列車は、夜に、消えるかい?

 ==≠=
今夜、休憩の僕ら二人は無口だ。アルカイック・ス
マイルの彼女と缶ビールを前にして僕は質問しかね
ている。空いていたのは「銀河鉄道の夜」そんな名
前の部屋だけだった。僕らは電気仕掛けの銀河に浮
かんだ。そしてただただアルコールを消費する。初
めて何もせずに寝る。延長して寝る。どちらかとい
うとかなり大柄の彼女は僕の腕枕で眠るときはまる
で子供のように小さくなる。僕は化粧を落とした顔
の方が好きなのだが、いびきにはちょっと閉口だ。
その口を塞いでみようと思う。

 ==≠=
・日本人離れした下半身の曲線
・そこだけ少女のままの乳房
・くっきりした妊娠線の名残り
・23歳の誕生日

 ==≠=
「夢を見たの。お母さんの夢
全身が包帯でぐるぐる巻きなの
踏切のまえで二人で待っているの
銀河鉄道が通りすぎるのを
でもお母さんの姿を見られるのが
ひどく恥ずかしいのよ、わたし
と言うか見られることがいやなの」
お母さんは何の象徴だと思う?
君の家庭だとしたら?
君の家には何か、隠したいものがあるのだろう
君自身の投影だとしたら?
君は「傷だらけ」なのかな
精神的に、いや、手術の痕なのかな?
「…
どうして、分かるの?
知ってるの?
あなたは何を知っているの?」
何も知らない。僕は何も知らない
知っているのは、あいつだろう

 ==≠=
 ぐるぐる巻きの包帯姿の
 僕
 と、ハリウッド並みのスタイルの彼女(胸のみ日本製)
 が佇む踏切を、列車が通りすぎるのを
 待つ
 承諾書へ、記名押印、僕の、僕の≠

 水晶がカンカン鳴り響く
 ああ、もうじき、

 美しく哀しい

 勾配での加速度、汽笛、誰と

 彼女は、夜に、消えるかい?


                                               Kuri, Kipple 2001.09.15


自由詩 銀河鉄道の夜 Copyright クリ 2004-01-27 02:26:13
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