電車男
或本仲一朗

平日の朝から
地元に向かう電車に乗る

ラッシュアワー
座席を埋める背広
気持ちだけ立ちっぱなし

他人事

関係のないように
見覚えのあるような
窓の外
あの建物
ありえない速度で右から左へ

あの看板の
いつもと違う角度
道路に並行する
パラレルワールド

他人事(そう思っているだけかもしれない)

そういえば最近は
やたらとこの世界がおかされている
そんな物語を描く
マスコミのあり方を思うと
話まで脱線してしまいそうになる

ガタンゴトン

近いようで遠い
高校生が話している
いくら声をひそめても
甲高い想いは響き渡る

どうやらその二人は付き合っていて
二人は先輩と後輩で
女の子は男子に
敬語を使っている
「じゃないですかー」
「ですよねー」
「なんですよー」

萌えてしまった自分が嫌だ

「変態じゃないですかー」・・・

顔は見ていない
二人は二つ前の駅で降りた

携帯・モバイル・mp3プレイヤー
電池が切れた
手持ちブタさん
否、手持ち無沙汰
そんなものもっていない

名前の知らない大学
有名アイドルのゴシップ
つられたポスターのゴシック、右から左
どうでもよい他人の必死さ、右から左

まもなく・・・

ゆるやかなブレーキに
ふとこけそうになる


自由詩 電車男 Copyright 或本仲一朗 2006-01-20 11:21:46
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