照夜 Ⅰ
木立 悟

  



明るすぎる夜に笑われ
飛び立つことのできない鳥
低く地平に交わるいかづち
遠くも近くも消し去りながら
鳥の横顔を照らしている
かがやく雲はさらにかがやき
夜の影を刻みつづける


雨が止んで
灰が止んで
原はすこしずつ銀にもどる
夜は濃く
響きは遠く
人の灯はひとつずつ消えてゆく
赤い子供は赤い輪になり
巣のような森から飛び立ってゆく


夜風のなかで
濡れた道がまたたく
空に直立する雲の刃が
幾度も頭上に振り降ろされ
地は空であふれる
もどることのない夜であふれる


折れた柱の影が
炎に至る火をまとい
花壇の上にひざまづく
夜の道から細い光が
空へ空へと昇ってゆく
耳のそばを過ぎる風
かがやくものが砕け散る音
飛び立つ子らを見つめる鳥
みな午後の祝福を得られないまま
夜の姿を追いつづけて
果てることのない独りの道を歩いてゆく











自由詩 照夜 Ⅰ Copyright 木立 悟 2006-01-16 11:16:44
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