ハル
霜天

ハル
そう呼べば君は心から紛れていく
ありがとうという意味で
口のかたちを残して
狭い空に雨が降っていた
振り切れない景色を順番に巡れば
何度でも逢える気がしていた


ハル
繰り返してみれば
届きそうにもない日常ばかりで
少し間違えたと肩をすくめた場所も
いつでも循環していたようで
ハル、僕らの仕事は
あちこちで絡んだ糸を解いているうちに
取り残されてしまったみたいで

いつから巡っていたかなんて
どこに立ってもわからないけれど
それが時代だ、なんて言うのは少し悔しい
ハル、そこに行ければ
君の背中よりも遠い世界のこと、見えるかもしれない


 暖かい陽射しのこと
 すべてが溶けていくこと
 僕らも、溶けていくこと
 ハル、もう少しで


水よりも温かい指先
確かに、そこにあった気がする深呼吸
ハル、ここに残されているものは
昨日のさよならよりも、ほんの少し遠い
僕の視線から二番目のドアをゆっくりと開けて
ハル、そう呼んで君は
いつもより速い世界に乗り込んでいく


ハル、そこに近づければ
僕らはもっと間違えていける
あの日がずっと循環するくらいに


ハル
そう呼べば、君は


自由詩 ハル Copyright 霜天 2006-01-16 01:32:44
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