プリズム
銀猫

ポストがあんまり赤く誘うから
こっそり仕組んだ悪戯めかして
宛名にきみの名前を書いた


雪があんまりひっきりなしに
きみの傍に寄り添うから
水晶の珠を割って
ちいさな虹で
憂欝の左手を熱くさせた


届いた、と笑う
きみの短い知らせは
何処か少し上気して
肩の雪が
しゅん、と融けた気配がする

遅れがちな春なら迎えに行こう

ヒアシンスの水栽培を
日なたに移し
硝子瓶のプリズムから
両手に蓄めた七色を持って


目論みを知らない北風は
ふたりの距離に
まだ安心しているらしい


決めた
迎えに行くんだ


自由詩 プリズム Copyright 銀猫 2006-01-12 09:01:32
notebook Home 戻る