月の郊外列車にゆられて
馬場 こういち

冬の朝
古い郊外列車に乗って
まだ仄暗いモスクワの駅を発つ

灯りのまばらな町並みを抜け
列車は広い雪の大地を走る

後ろの車両から入ってきたジプシーの子が
スーパーの袋を両手に持ち
長身の男が奏でる
アコーディオンに合わせて唄っている

月のヒカリはキラキラ唄うよ
 夜の波間に星のヒカリ
  ゆらゆら
   ゆらゆら浮かんでいるよ
    月のヒカリはキラキラ唄うよ

「こどもにあんなことさせるなんてサイテーよ」
隣りに座っていた女がつぶやく

月のヒカリはキラキラ唄うよ
 夜の波間に星のヒカリ・・

雪野原のむこうに
青白く広がる稜線は
海のような空だった

北西へむかう郊外列車は
広い雪の大地を走る
 
       


自由詩 月の郊外列車にゆられて Copyright 馬場 こういち 2006-01-11 09:52:25
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