失う旅
HARD

ここは砂漠じゃない
砂漠じゃないが木々は疎らで 葉は緑を失っている
天候は悪くない
雨も雪も降ってないが太陽の位置も わからぬほどに曇っている

色のない風景 意味のない旅

従順なイエスマンに訊ねる
「僕は一人だね」
はい、そうです
「目的地などないんだね」
はい、そうです
「僕は誰だい」
はい
「僕はどうしてこう歩いているんだろう」
はい はい

イエスマンの首を絞めて
だらんとした体を地の上に置いた

火のついた飛行機が音も無く
右から左へ堕ちていった
国旗のようなマークが描かれている

ああ そういえばここは 何という国の 何という所だろう


歩きすぎたせいでお気に入りの靴は穴が開いた

僕は色々な物を失いすぎた
いつか僕は
身につけている服もなくし
穴の開いた靴もなくし
この風景もなくし

辿る道は既になくし 行くべき場所は元々持たなかったのかもしれない

大地はひとつ風が吹くと吹き飛び
そこに何が残るだろう
何もない 足元も天空もない その空間を
僕は旅するのか


  どうか誰か教えてやってくれないか
   僕は僕の中にいるだけだと
    僕の中の僕は わかろうとしないんだ


自由詩 失う旅 Copyright HARD 2006-01-09 00:10:41
notebook Home 戻る  過去 未来