スズラン
阿麻

喪中はがきのイラストに
スズランの写真をのせてみる
あの人は 花が好きだった
だから もう
それでいいよと親がいう

何十年払い続けた
「年金」を
あともう少しで受け取れるというときに
ああいうことに なってしまい
もう、本当に「つまらないよね」とか言い合っていて
みんな顔は
疲れきり
青ざめ
眠れず目はうつろ、でも 
やっぱりいろいろと
慰め合うから

死んじゃった人よりも 
残されたもののほうが 
何百倍、何千倍、いいえ何億倍も
むごたらしい苦しみを 味わうわ
これから先、死ぬまで

二本立てのロウソク
おごそかに ふたつの小さな火 まるで
黄泉の入り口を
ふさぐためのような 線香の香りが立ちのぼる

喪中はがきのイラストに
スズランの写真をのせてみる
あの人は 花が好きだった
だから もう
それでいいよと親がいう 


自由詩 スズラン Copyright 阿麻 2006-01-06 14:29:09
notebook Home 戻る