慟哭のサーカス
maumi

今 慟哭を以って歩くのは
雄叫び轟く サーカス団の群れ
黒い背景に 浮かび上がる
黄金の月

悲しみ隠した その顔に
笑化粧の厚塗りをした 道化師
悲哀の広告(チラシ) ばら撒き踊る

道化師の手招きがゆるりと
コバルト色の カーテンするりと開いて
首をもたげた道化師が 耳元で囁く 

「物語の始まり 始まり」

髪が長い男 ナイフを操る
スパンコールが光る 女の頭に林檎の的
目隠しという名のエゴで 放られたナイフ
的に刺さり 喝采を浴びた

知らない国の 知らない街で
男の子 ナイフを操る
向けた刃先は 生きる為の凶行
目隠しという名の絶望で 放られたナイフ
男と共に 海に捨てられました

青い目の男女 ブランコを操る
羨望の眼差しの先 飛び移る
男の手は しっかりと掴み
喝采を浴びた

知らない国の 知らない街で
廃墟のビルの 壊れた手摺
男の子 逆さにぶら下がる
空腹は悲しみの声を隠し
逆さにぶら下がるのは
怒りを抑える為の手段

小さい丸い筒 その中に入るダンサー
その美貌で お客をものにした

知らない国の 知らない街で
身体を売り物にする 女の子
その無垢な瞳で お客をものにしました


昨日1人の男が 銃で撃たれて死にました
その男は名前もあり 家族もあり 兄弟もいた
TVで知った 男の名前
今日で忘れる 男の名前
昨日どこかの国で いっぱい死にました
その人達も名前もあり 家族もあり 兄弟もあり
恋人もいて 飼っている猫や犬や 育てている
花もあっただろうに
知らない 名前達
今日で忘れることさえ 出来ない名前達


最後に出て来たのは 髭を伸ばした
黒いブーツ姿の 太った団長様
マイク片手に高々と 声をだす

知らない国の 知らない街で
黒いブーツ姿の 髭を伸ばした将軍様
銃を片手に高々と 声を出し
革命という名の弾丸を 私の国に降らせます

今 また出てきたのは 笑化粧の道化師
サーカスの序章は いかがだったかと尋ねる
コバルト色のカーテン 静かに閉じて
丸いスポットが 儚く消える

瞼の奥に焼きついた 光輪は

走馬灯の終焉を知らせるものなのか
私の終焉を知らせるものなのか

うつむいた 私にはせんなきことか
ただ 伝える口元笑みを残す・・・


自由詩 慟哭のサーカス Copyright maumi 2006-01-04 19:05:31
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