白樫物語
恋月 ぴの
冷たい北風に煽られ
凍える霙に打たれても
白樫の木は黙して耐え抜く
容赦ない吹雪の最中
総てを失う事の恐ろしさに
怯えてはならない
大地深く張り巡らした根の先より
明日への滋養を蓄え
敗北を恐れてならない
例え捕囚の身となろうとも
囀る者には決して耳を貸さず
冬来たりなば春遠からじ
幾多の困難に耐えた
白樫の幹は堅く引き締まり
宙を抱え込むように広げた枝々に
柔らかな春の日差しを浴び
雪解け水はせせらぎとなり野山を潤す
それは大地に根ざす息吹きの証し
明日への希望を胸に抱き
暫しまどろむ一本の白樫の木となる
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