loop
霜天

 声の聞こえる道、通っていく道
 生まれてくることが、生きていたいと思ってた
 三月の花が、九月に散ろうとすれば
 いつだってそこからは、そこからは


  *

始まりはどこにでもあって
終わろうと思えばいつだって終われた
君はここじゃない、見えてこない光を見ては
涙は一人勝手だといつでも笑った
二月、隙間、入り込む冬
そんなものを見つけては
足跡を付ける理由にしている

  *

裏路地の花の生きていた五月
踏み潰されたゴムボール
さまよっていたシャボン玉
片目の取れた人形の見つめていた噴水
飛び散る飛沫の隠れるように虹
ここに居てくれるなら
なんでもよかった

  *

八月、空は割れて
東京タワーの赤の光、や青の、緑の
昨日の野良猫は、結局今日は帰らなかった
望んだ通りに眠りに付いたのなら
もう、手は届かないんだね
生まれた場所を思い描くと
なぜか真っ白な写真ばかりが浮かぶ

  *

順序通りに絵を見て行く
初めから一つずつ、明かりを消していく
見終わった世界は、もう片付けられて、見えない
十一月の夕暮れる足跡の深さ
スイッチを消すように、君の
隣の席を詰めながら
もう一度生まれてきたかった

  *


 散った花が線になって
 この背中を埋めている
 回っていく部屋がもう一度動けば
 その時もそこからは、そこからは、そこからは、


自由詩 loop Copyright 霜天 2005-12-31 01:40:02
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