夕暮れに咲く花
服部 剛
いつのまに
我が胸に吹き込んできた
風の女よ
君が踏みつけられた花を見て
傘をさしたまま立ち尽くし
ひび割れた心のすき間をほの青く光らせ
雨音に滲む心を痛める時
遠い空の下では
僕も冷たい手をポケットにつっこんだまま立ち尽くし
街灯に映されて
アスファルトに伸びる影に
光るふたつの瞳を隠し
南の空に瞬く星の囁きに耳を澄ませている
( やがて君は夜の川辺に腰を下ろし
已むに已まれぬ心に刺さった棘のひとつひとつを抜いて
光になった言葉達をのせた灯篭の小船を
白い手からそっと離すだろう )
( やがて
人知れぬ川の流れに運ばれる
淡い光の灯篭船が
全ての夜を越えて
僕の貧しい胸の内側にひろがる闇の海に
吸い込まれてゆく頃・・・)
夢の中の
日だまりに置かれた
小さい植木鉢に
ひとつの想いは
水をすいあげようと根をはりめぐらされた
黒土の下から萌えて
夕暮れてゆく空を映して
ほの青さとうす桃色のとけあう
花びらが開いてゆく
うつむいていたつぼみを
ゆっくりと空へむけて