夕暮れに咲く花
服部 剛

いつのまに
我が胸に吹き込んできた
風のひと

君が踏みつけられた花を見て
傘をさしたまま立ち尽くし
ひび割れた心のすき間をほの青く光らせ
雨音ににじむ心を痛める時

遠い空の下では
僕も冷たい手をポケットにつっこんだまま立ち尽くし
街灯に映されて
アスファルトに伸びる影に
光るふたつの瞳を隠し
南の空に瞬く星の囁きに耳を澄ませている

( やがて君は夜の川辺に腰を下ろし
  むに已まれぬ心に刺さった棘のひとつひとつを抜いて
  光になった言葉達をのせた灯篭とうろうの小船を
  白い手からそっと離すだろう )

( やがて
  人知れぬ川の流れに運ばれる
  淡い光の灯篭船が
  全ての夜を越えて
  僕の貧しい胸の内側にひろがる闇の海に
  吸い込まれてゆく頃・・・)

夢の中の
日だまりに置かれた
小さい植木鉢に
ひとつの想いは
水をすいあげようと根をはりめぐらされた
黒土の下から萌えて

夕暮れてゆく空を映して
ほの青さとうす桃色のとけあう
花びらが開いてゆく

うつむいていたつぼみを

ゆっくりと空へむけて





自由詩 夕暮れに咲く花 Copyright 服部 剛 2005-12-30 16:51:06
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