ちからのかけら
木立 悟




ちからはちからへ垂直に落ち
からだはからだへ傾いてゆく
気まぐれな風の格子
雪道に揺れる草の影
重なるようで
重ならぬもの
煌々と冷たく
空を持ち去る


何も書かれていない枯葉が
雪のなかから立ち上がり
かすかに残る空を映して
ふたたび静かに沈んでゆく


原の瞳 遠吠えの色
曇に至る狼煙のうた
まだらにまだらをひらくことだま
すぎゆくひかりをうたうことだま


雪のかたちにまわりつづけ
わずかなちからのかけらをわたり
息は闇の色に降りおり
土に触れては眠りに落ちる


音をどこかに置いたまま
夜へ夜へと歩む火の群れ
遠い灯りの花の房たち
横切るかけらの影たちを見つめる


たしかに書かれていた文字が
いつか消えてゆく朝に
ことだまたちのひとりひとりは
雪に眠るものを指さす


つつましやかに
空をほどく手
欠けた場所から
にじみ湧く空


雪道の上を飛ぶように歩み
あおぎ見る目をまぶしくほそめ
ちからのかけらにめざめた息は
重なるようで重ならぬ手で
何も書かれていないひとつの
あざやかな言伝ことづてを受け取ってゆく










自由詩 ちからのかけら Copyright 木立 悟 2005-12-29 18:17:20
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