White Tree
服部 剛

駐輪場に停めた自転車の
前輪に取り付けられた鍵の穴に
鈍い銀色の鍵を差し込み
両手でハンドルを持ち
2台のスクーターの間をぶつからぬよう
抜け出るよう そっと 引く 

片方のペダルがスクーターに少しこすれた
間を抜けようとする時
お互いは少しずつ傷付くもの

( 時が流れれば
( たいていの傷口は知らぬ間にかさぶたが覆っていた

( いつか 深い心の傷口さえ光はにじみ・・・

誰かと交わした言葉がすれ違い
胸の痛んだ場面を遥かな背後に遠ざけるように
自転車のペダルはよどんだ心を振り切って回り続ける
マフラーを冬の冷たい夜風にたなびかせ

我家わがやへと続く夜道の先に
七色の小さい灯が瞬くホワイトツリー

遠い闇に浮かぶ おぼろな光




自由詩 White Tree Copyright 服部 剛 2005-12-27 22:42:10
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