Snow storm
落合朱美
ヘッドライトを浴びて踊る雪は
しだいに密度を増して
行く手の視界が遮られる
海岸添いのゆるやかなカーブが
永遠に終わらないという錯覚
私たちは
どこへ向かっているのだろう
辿ってきた道を振り返っても
そこには何も見出だせず
積み重ねた時間のぶんだけ
沈黙とため息が増えた
退屈な時間を持て余して
ダッシュボードから煙草を取り出す
寡黙にハンドルを握っていた男が
軽い舌打ちとともに素早く窓を開ける
あまりにも冷たい あうんの呼吸
背筋が身震いするのは
外気に触れたせいだけではなく
大粒の雪が
フロントガラスめがけて押し寄せる
車のスピードが増すほどに
それは大群の虫のようで
思わず身をすくめる
私たちはこれから
何を築き上げていけるというのだろう
胸もとから込み上げる渇いた塊
噛み潰したら苦くて
もう笑うしかない
男はアクセルを踏みつづける
雪は止まない
過ぎてきた時も向かいゆく時も
容赦なく埋めつくす
私はひとり
カラカラと笑いつづける