夕波
霜天
地下鉄から生まれた人たちが
夜の寸前で吐き出されている
空へ続く四角い階段
斜めに染まる街の角度で
溶かされそうになっている
午後六時は動き出せない
指先も爪先も逃げるように
眠るには早い世界で
明日のために薬を飲む
白、黄色、橙色
元気になった気がするのは、ほんの一瞬だけ
爪切り
少しずつ私を削っていく
走り抜ける一日を
ドーナツの穴から眺めてみる
回り続けてしまうのは、内も外も
どちらでも
食べきってしまった後でも
止まれないのはなぜだろう
寄せては返す夕暮れの色
今日も地下鉄の海から生まれた人が
地上で、あちこちで、溶けている
点や線や、その他色々を結びつけて
今日というかたちに揃えてみせる
溶けゆく人は一様に黙って
街から遠くを、どこか遠くを
夕波が聞こえてくるように