1.詩の商品力
いとう

 詩について個人的に考えていることを話していくので、時々独断と偏見に満ちたものになるかもしれませんが、そこはそれ、テキトーによろしくということで。というわけでまず、詩の「商品力」について。

 「商品力」と書くと、これまた誤解している人が多いんですが、「商品力」=「質の良さ」ではないんですね。詩の商品力を高める=良い詩を書く“だけ”ではないんです。もちろんそれも大事なんだけれど、良い詩を書いていれば自然と売れる=商品力が高まるわけでもなく、逆に、見当外れの市場にいくら投入&訴求しても売れるわけがない。ま、自明の理です(笑)。

 「商品力」の向上には、3つのポイントが存在します。

1.質を向上させる
2.特性を理解して訴求する
3.付加価値を付ける

1.質を向上させる
 これはもちろん、良い詩を書いていくことですね(笑)。これはもう、ひたすら自分が「良い」と思う詩を書いていくしかないんじゃないでしょうか。何が「良い詩」なのかはもう、人それぞれだと思うので、そのへんは各自におまかせ。つーか、書くのめんどくさい(笑)。何が売れるかわかんないし(笑)。なんつーか、梨や林檎にいろんな種類があるようなもんです。どれが「良い梨」なのか。そんなもん人それぞれ。
 ただ、詩の「傾向」と「稚拙」を混同しないようにしたいものです。詩の「傾向」においてその作品の質はどうなのか。それを見る目を養っておかないと、果物屋で肉を探したり、腐った梨を平気で売ったりしちゃうので。ま、そういうのは客であろうと店員であろうと淘汰あるいは洗練されていくけどね。市場原理の基本として。

2.特性を理解して訴求する
 これはですね、「誰にとって」良い詩なのか、それを把握すべきということです。商品の特性を理解して、それに見合った市場に訴求してく。相田みつをや銀色夏生が成功しているのは、このポイントにおいて商品力を向上させているからに他なりません。自分の作品にはどういう特性があって、どこにどのように訴求すればいいのか。商品特性も知らずにやみくもに売っても誰も買いませんってば。
 ちなみに、2において1の質はまったく無関係です。ここで関係するポイントは、詩そのもの「質」ではなく、固有の「特性」が市場の需要とどれだけマッチするか、マッチさせるかにあります。「質」以外の特性が市場のアンテナに引っ掛かるわけです。
 たとえばウーロン茶が市場に定着したのは、「味」を訴求したからではありません。マーケティングにおいてウーロン茶が訴求したのは「無カロリー」という特性です。この特性をダイエッター層に訴求することによって、ウーロン茶は市民権を得ました。「味」による商品の差別化が行われ始めたのは定着後です。市場がまず詩に求めるのものは、はたして「質」なのか。まずそこから考えていく必要があります。


3.付加価値を付ける
 これは、んー、対象が広すぎて上手く説明できないんだけど、要は、詩を読む、書くことに、それ以外の価値を持たせるということです。これはもう、付加価値を付けていない商品なんてまず存在していません。
 イチローがマリナーズに移籍してから、途端に大リーグの人気が上がりました。これは、大リーグに「イチロー」という付加価値が付いたからなんですね。で、さらに、大リーグ観戦ツアーが山ほど組まれました。これは、アメリカ旅行に「イチローという付加価値の付いた大リーグ」という付加価値を付けてるんですね。ツアー参加者としてはイチローが見たいだけなんですが、旅行業者から見れば、明らかにそれは旅行チケットの付加価値でしかありません。
 もっと単純な例だと、クーポン券や「●●が当たる!」や「ボスジャン」や「チョコエッグのフィギュア」だって、これらはすべて付加価値です。また、小さな例だと、CMに人気タレントを起用するのも付加価値の一部です。マック(関西ではマクド)の平日半額セールだって、あれも「半額」という付加価値が付いてるという捉え方もできます。休日倍額というマイナス付加価値も付いてるみたいですが(笑)。326なんか、詩にユニーク(←面白いという意味ではなく)なイラストという付加価値を付けて売れました(付いてる付加価値はそれだけじゃないけれど)。
 ま、というわけで、詩(poetry)にどんな付加価値が付くのか、あるいは自分の作品(poem)にどんな付加価値を付けられるのか、逆に、詩を何の付加価値にするのか、そのへんを考えていくのも、詩の商品力向上に役立ちます。

 以上、つらつらと書きました。次回からはこれら3つのポイントについて、個別に詳細を述べていく予定です。



散文(批評随筆小説等) 1.詩の商品力 Copyright いとう 2005-12-19 13:56:45
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