空耳
はな 

昨夜が溢れてしまって
まだ所々
ぬれている床
こけのむすまで と歌うきみは
君の代わりにと
あかい手で雑巾をしぼり
はなびらの舞う冬の景色に
ほおった

あしあとをくずして
きみのよごした夕陽色を
洗えずにいる
きみのみていたそらには
電車がとんでいたのだ
わたしにはもう
波うつでんせんしか みえないのに



(わたしの前には
二色の水分が べつべつの容器にあって
うそにまみれて
光にずぶぬれている
だれかが見ていて
それは わたしだったのかも
そんな、ゆめ)



重なってねむっている
猫のように
あいまいな この すきまのない日々
変わってゆかない
街の灯
ごまかされない
ごまかしもしない
ただ ここに在るもの

そっとはなびらは舞ってゆく
冬のがいろに
わたしには
いつもふつふつと、かがやいていて
ぼうっとした
なにかに似ていて


ここが
きみとわたしの国境線
きみのこえばかり
空耳


自由詩 空耳 Copyright はな  2005-12-18 23:48:33
notebook Home 戻る