*夢であいましょう*
かおる



目をクリクリさせて
鼻の穴を大きく膨らませて
電信柱の後ろに隠れているおとこのこ
笑いの爆弾を抱え
友達が近づくのを待っている
ワッ
キャ〜
あ、ビックリした。
いやだぁ、けんちゃん。
心臓が止まるかと思ったよぅ
嬉しそうに手を繋いだ子供らが駆けていく
驚く事はあんなにも簡単だったのに

2001年9月11日、日本時間夜10時
数週間に渡る案件をやっとこさ、片付けて
ボロ雑巾のようにベッドに倒れふした私に
飛行機がツインタワーに突っ込んだと言う
ルームメートの叫び声
エープリルフールじゃあるまいし
どんな映画を見てるんだか
趣味が悪いと
ドロのように眠った

起き抜けのニュースは
映画さながらだった
普段の仕事は待ったなしで降ってくる
知人は大丈夫なのか・・・
謀殺される中、ふた月遅れで辞令を受け
煙と埃の舞い上がるグランド・ゼロへ

安否を問うビラと物見高い群衆が犇めき合う
ニューヨーク冬の名物の地下鉄の煙と同じゆげ
燻る匂いは凍り付く事も無く
胸の奥底をギュっと攫んで離れない
街が一つ消え去った跡
全てはやはり砂城のようで
夢から覚めた現実には
どんな粉薬が蒔かれたのか

あの日は長い夏休み気分が終わった
抜けるような蒼空が広がる
典型的な休日明けの火曜日だった
この街の小高い丘からもハドソンリバーを挟んで
摩天楼がクッキリと浮かんでいた

眠り姫は来ない王子のキスを待つ


自由詩 *夢であいましょう* Copyright かおる 2005-12-17 09:06:08
notebook Home 戻る