公園
草野大悟

高層マンションの谷間に
ひっそりと公園

そこだけは昔のまま変わらずに
闇の中に
ぽっかりと

術後麻酔のなかで
すべてをかけた無意識で
あなたがいま
探しつづけている
あなた自身





みっちゃんが小さいころ暮らした家は
競輪場の近くの郵政官舎で
中学二年のころ
ぼくははじめて
みっちゃんちに遊びに行って
ここがみちこが
小さいころ遊んでいた公園よ
ぶらんこが大好きだった
と、教えてくれた公園が
闇の中に
ぽっかりと浮かんでいる




この坂を下って
右に曲がると
みくまり神社
その先には
ごうごうと水音たてる渡鹿堰

   〜がんばれがんばれ
    みっちゃん
    まけるなまけるな
    みっちゃん

まっすぐ歩いて行くと
あなたが妹とふたり
大学生の時に間借りしていた葉室さんの家
その隣には
海水浴で真っ赤に日焼けして
ふたりで入った銭湯の跡地

そこを抜けて
小さな小さな路地を
どんどん歩くと林ビル
いろいろあった10年間の林ビル

10年間歩いた道を県庁まで
昔のままに歩いて行くと
郵政官舎

   〜がんばれがんばれ
    みっちゃん
    まけるなまけるな
    みっちゃん

この道をふたりで江津湖まで
地球防衛隊活動していた
真夏の日射し

そこから十分
ぼくらが出会った中学校に着く
今も変わらない
帯山中学校がある


    〜がんばれがんばれ
     みっちゃん
     まけるなまけるな
     みっちゃん

ショートカットの純粋が
体操している

闇の中に
ぽっかりと公園

ちいさなころ
ここでよく遊んでた
ぶらんこが好きで
うめぼしの種の中身がピーナッツだと信じてた

中学2年のころ
あなたが恥ずかしそうに教えてくれたあの公園が
マンションの谷間に
奇跡のようにぽっかりと浮かんでいる


   〜がんばれがんばれみっちゃん
    まけるなまけるなみっちゃん




みっちゃんはいま
暗闇を彷徨っている
前頭部の頭蓋骨を開かれたまま戦っている
小さな体で戦っている
公園を探している

ぼくらは負けない
決して負けない
ふたり
公園で遊ぶまで
 



自由詩 公園 Copyright 草野大悟 2005-12-10 22:35:36
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