ノート(冬の蛇)
木立 悟

 
道端で
ガードレールを呑み込んで
冬の蛇が死んでいた
白く 汚く
冷たく 硬く
すべてに背中を向けていた


ひとりの少女が泣きながら
蛇の頭を撫でていた
私は言った
冬になればまた蛇は生まれる
少女は言った
同じ蛇が生まれるの
私は言った
わからない
けれども蛇が滅びることはない
彼に再び会いたいのなら
手のひらや涙で接しないほうがいい
彼はひとり
彼は冬
彼は言葉そのものだから


少女はまだ泣いていた
ガードレールの硬さが残る
蛇の腹を撫でていた


少女は言った
言葉なんて知らない





自由詩 ノート(冬の蛇) Copyright 木立 悟 2004-01-17 20:59:23
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連輪の蛇