背中から零れていくように
霜天
朝になると
静かにそれを繰り返す屋根の波を
勝手に世界と呼んでいた
語る言葉はどこかに置き忘れて
少し笑う背中で世界に潜り込んでいく
息を吸えば吸うほど
体は軽くなっていくはずで
両腕を広く伸ばしていけば
いつかは空になれるはずで
憂鬱な色の午前七時は、いつもの音で破られていく
振り返れば振り返るだけ
同じ色をした目でここまで来たこと
しゃがみこむようにして消えた人の、その隣で
忘れていた小石が靴の中で痛む
すべては、思い出すことを
朝になれば
霞んでいく街並を海と呼んでいた
どこかに置き忘れていくものと
新しく出入りする人たちが混ざり合う
背中から零れていくように