千里眼
仲本いすら

彼女の眼は もうどこか遠いところを
覘いているようで
あからさまに
目の前で
道化を演じてみても

くすり、

とも 笑いません

時折、彼女は

「カルロス、もうお別れの時間ね」と
口から漏らしますが

その言葉は
口から漏れるたびに

どろり、

と 優しい色のゲル状に
変わっていくんです

そのゲル状を
拭うのは、僕です


彼女の眼は もうどこか遠いところを
覘いているようで
あからさまに
目の前で
銃口を押し付けても

ぴくり、

とも 動かずに

「今頃カルロスは、インダスのほとりかしら」と
まるで
僕など見えてないかのように

引き金を引いた瞬間に
彼女は
優しい色のゲル状になり

僕の眼は
彼女の見ていた方向に


また、

引き金を引いた

空は優しい色を、していた。







自由詩 千里眼 Copyright 仲本いすら 2005-11-28 18:03:16
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