シャボン玉
松本 卓也

冷め切った路地に
泡沫の玩具が舞って
寒さ堪えて歩く僕の
肩に弾けて消えていった

子供達の無邪気さと
自分の卑しさとを比べ
小さく息を吐いて
無造作に首を振る

涙が出た訳じゃなく
冷たい陽光に映えた
シャボンに奪われた視界
日常の欠落を埋めたようで

立ち止まり振り返る
笑い声 遠くに響き
そよ風 無垢を運んで
映えた空 吸い込まれ

あの風景に一瞬でも
僕は居れたのだろうか
駆られた衝動を苦笑で抑え
浮いた造型を思い浮かべ

ふと風に舞う泡沫が一つ
目の前をゆらりと横切った


自由詩 シャボン玉 Copyright 松本 卓也 2005-11-23 08:10:14
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