立冬に ひかり
はな
その中で 支度をする
なお、ひかる
くるしいまばたきに
ゆびのすきまからあふれ
染みを
のこして
あの日
髪をきってほしいと言った
初冬だった
あさひがのぼるまえの
しんしん冷える
つめたいふとんのうえで
ひとり、
おきあがる
ひがしに 背をむけていた
カンガルーの夢は
みていると
すこし酔ってしまうから
だからいつも
めをとじていることができない と
わらっていた
目醒めた時
ふと、夜明けの
つくられてゆくさなかの町にいて
はぐるまのおとが
みみもとで ひびいていた
あの日
魚屋の水槽で
さくらえびの交尾を見ていた
ながれぼしのように
ひかっては すきとおってゆくすがた
桜雨のふるころ
線路わきの
石塀をわたっていたあなたの
風のような背を
おもいだす
あの日
つまらないことは大声で
と
僕たちは
やくそくしたから
そっとはなした手はおが屑のように
とてもちいさく かるかった気がする
僕はいく度
あなたに
さよならを言っていただろう
手を振るような かざぐるまのおと
ちいさな荷物をほんのひとつ
片手に