立冬に ひかり
はな 

その中で 支度をする

なお、ひかる
くるしいまばたきに
ゆびのすきまからあふれ
染みを
のこして






あの日
髪をきってほしいと言った
初冬だった
あさひがのぼるまえの
しんしん冷える
つめたいふとんのうえで
ひとり、
おきあがる
ひがしに 背をむけていた


カンガルーの夢は
みていると
すこし酔ってしまうから 
だからいつも
めをとじていることができない と
わらっていた
目醒めた時
ふと、夜明けの 
つくられてゆくさなかの町にいて
はぐるまのおとが
みみもとで ひびいていた



あの日
魚屋の水槽で
さくらえびの交尾を見ていた
ながれぼしのように
ひかっては すきとおってゆくすがた
桜雨のふるころ
線路わきの
石塀をわたっていたあなたの
風のような背を
おもいだす



あの日
つまらないことは大声で

僕たちは
やくそくしたから
そっとはなした手はおが屑のように
とてもちいさく かるかった気がする
僕はいく度
あなたに
さよならを言っていただろう



手を振るような かざぐるまのおと
ちいさな荷物をほんのひとつ
片手に




自由詩 立冬に ひかり Copyright はな  2005-11-19 02:07:17
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